―――貴方は全てを捨てでもやりたいことは無いの・・・?私はあきらめないわ・・・この長い髪も綺麗な衣装も、屋敷での贅沢な生活もいらない・・・
―――ただ夢を捨てる事だけは嫌なのよ・・・・サン・・・・
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「・・・・・・・・・っ!!」 リアルな再現ムービーの様なかつての夢にサンは飛び跳ねるように身を起こした。
「・・・・・・・・・・」 夢の余韻が脳裏にくすぶりサンはベッドから降りて、窓を開け空を見上げた。 輝く月の神々しさにサンは思わず手を伸ばした。
「どこにいるんだ・・・・雪・・・」
かの人の名前を口にした途端、自分の声があまりに震えているのに気づきサンは胸が締め付けられる気がした。 何も分からない・・・何も理解できないうちに自分の婚約者は姿を消してしまった。 親の決めた婚約。でもそれが両家の繁栄のためにはとても良い事だと分かっていたからサンはそれでいいと思った。 ―――決められた結婚の何が悪い?それで皆が幸せになるならいいじゃないか・・・
なのに彼女は消えた・・・多くの者を犠牲にして・・・自分を置いて・・・
サンは唇を噛み締めて壁に拳を叩きつける。婚約者の雪がいなくなってからすでに三ヶ月は経つのに未だに出ない答えに苛立ちが増すばかりだからだ・・・
「・・・・何で・・・・なんでだ・・・・・教えてくれ・・・っ!!」
―――ねぇ・・・貴方には・・・夢は無いの?
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「・・・・・・・・・・・!?」
「お〜〜〜〜いピロリ!!チヒロ用の機体の整備終わったか・・・って・・・どうしたんだ?」 チヒロの訓練機の整備の様子を見に来たミディは、壁の一点を見つめて瞬き1つしないピロリを不審に思い目の前で手を振ってみた。
「あ・・・・ミディさん・・・・」 「まじでどうしたんだよピロリ・・・なんかおかしいぞ・・・?」 「いえ・・・・ちょっと誰かに呼ばれた気がしただけなんですけど・・・・」 ピロリはどこか遠いところを見るように視線をめぐらす。
「ピロリ・・・・・」 「あっ!!そんなことよりミディさん!!本当にこの機体でいいんですか・・・!?一応の整備はしてますけど・・・!!」 しばらく瞳を虚ろにしていたピロリだが、意識を覚醒させると整備書を片手で叩いてミディに訴える。ピロリの様子が気になったものの今までいまいち彼女の過去に突っ込んでこなかっただけに今さら聞きづらくなっていた。 「・・・ん?あ、あぁ・・・いいんだそれで。さっきチヒロの動体視力テストとかいろいろやってみたんだけど中々見込みがあってな」 「だからって・・・!!こんなじゃじゃ馬乗りこなせるのミディさんぐらいですよ!?」 「だ〜か〜ら整備させたんだろ!?オートマ機能つけてれば何かあっても大丈夫だって!!」 「・・・・ミディさん・・・・なんか面白がってませんか・・・・?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・別に」 「ミディさ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!機体で遊ぶのは整備士のこのピロリが許しませんよ!?」 「なぁ〜〜〜にいっちょ前ぶってんだ!!塩と砂糖間違える奴が!!」 「それとこれとは話が別じゃないですかぁあ〜〜〜〜〜!!!」
普段の会話、普段のじゃれあい・・・それでもふとした瞬間、ピロリの消えた過去がピロリを呼び戻しているようで、ミディは楽しい気分になれなかった。
(なぁピロリ・・・記憶が戻ったら、お前はやっぱりいるべきところに戻るのかな・・・?)
今ではこのデブリ・クリニック・カンパニーにいなくてはならない存在のピロリ。 いつかのピロリとの出会いを思い出し、ミディは俯いた。
「それで、今からシュミレーションテストするんですか〜?」 「・・・・・・・・・」 「ミディさん?どうしたんですかぁ?」 「・・・・・・・・いや、なんでもないさ!はやく準備しちまおう!!」 「あ・・・・・はい・・・?」
元気がなさそうに見えたミディの態度に首をかしげながらピロリは準備を始めた。 操縦シュミレーションでチヒロの能力を図るためだ。 しばらくすると、ピロリが買ってきたピンク色のジャージを身につけたチヒロがやってくる。
「・・・・・・・・・・・っぶぁっはははははははは!!!!何だそれ!!どうしたんだチヒロ!?」 「ま、まぁ!笑う事はないでしょう!?ピロリさんが買ってきたものなんですのよ!?」 「うわぁ〜〜〜お似合いですよぉ〜〜〜!!いいですよねぇ〜ジャージ・・・機能的で可愛くて」 「ピロリちゃんのセンスを疑うな・・・俺は・・・」 「ディヴィスさん!?」
不恰好な姿に頬を膨らませていたチヒロだが、後ろからディヴィスの声が聞こえ目を丸くして振り返った。
「よっ!また様子見に来てたんだけど、調子はどうだい?」 「上々だ」 「ミディに聞いて無いだろ・・・。今からシュミレーション?」 「あっ、はい!!」 「適正のテストだから気張らずにリラックスしていけよ?」
そう言ってディヴィスはチヒロの頭をくしゃくしゃと掻き撫でる。チヒロはやはりまた頬を赤くして頭を抑えた。
「準備できましたよぉ〜〜〜」
ピロリの声にチヒロは返事をするとシュミレーション用の設置された機体に乗り込んだ。
「じゃあ、3つ数えたら始めますからね?ミディさん、カウントお願いします!!」 「分かった。準備はいいかチヒロ?」 「はい!!」
ミディの声にチヒロは力強くグリップを握った。
「3・・・・・・2・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・」 「1・・・・・・・・・・・・・・・・・GO!!」 「!!」
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“シュミレーション終了です。パイロットは適正結果を・・・・・”
テスト終了のアナウンスが機械から流れる。 機体の席には疲れたのか、ぐったりした様子でチヒロが座っていた。しかし、ミディもピロリもディヴィスさえもチヒロに声をかけるでもなく、唖然と立ち尽くしていた。
「・・・・・・・・・嘘だろ・・・・まさか、こんな・・・・」 冷や汗をひとつ垂らしてディヴィスは声を震えさせた。 「・・・・・・・・・あっ・・・・チヒロちゃん!!」 ようやくピロリが震える足を叩きつけチヒロの元に駆け寄り、肩に手をかけ体を起こさせる。 疲労困憊の様子でピロリに支えられるチヒロを見ながらミディは不敵に笑った。
手元にはチヒロのシュミレーションの結果表・・・
「・・・・・・・・これほどとは・・・・な・・・・・」
“パイロットは適正結果を受け取ってください・・・パイロットは・・・・”
静まり返った室内に、機械の音だけが不気味に繰り返し響いていた。