一瞬、その場は静まり返った。チヒロがナツと呼ぶその男は、冷ややかな目でチヒロの周りを見回した。チヒロも負けずとナツを睨み続けた。
「帰りますよ、チヒロ様」 「なんであなたがここにいるんですの!!?」 「何言ってるんです。あなたを迎えに来たからじゃないですか」 「私には・・やるべき事があるんです!そう簡単には帰れませんわ!!」
チヒロのその言葉にミディはやっと我に返った。
「おい!!てめぇ!誰の許可を得てここに来た?ここは関係者以外立ち入り禁止だ。」 「それは失礼。しかし私はチヒロ様の関係者・・・今日のところはそれでお許しいただけませんか?」 「いただけねぇな・・・全然いただけねぇよ。ここに入っていいのはどんな理由であれ私が許可しものだけだ・・・第一、チヒロは帰りたくないって言ってんだろ!とっとと帰んな!ピロリ!!塩まいとけ。」
いきなりのミディの言葉に一瞬ピロリは変な動きをした。・・・が急いでまじめに食堂に直行した。
「あのばか・・・ホントに行きやがった。まぁともかくだ、目障りだから帰ってくれ」
ミディは冷たく言い放った。しかしナツはミディの言葉を聞こうともしなかった。
「帰りますよ、チヒロ様。お父上もメイドたちも心配しておりましたよ。」
そういうとナツの顔は少し笑顔になり、少しだけ帰りたい気持ちにさせた。チヒロは足を前に出した。ミディは同時に眉間にしわを寄せた。
「どういうことだ?帰るのか?」
するとチヒロはミディのもとに走ってきた。そして耳元で何かを囁いた。ミディはニッコリ笑い言った
「そうか・・・じゃ・・帰りな!!おいそこの黒いやつチヒロを連れてけ!」 「そうですか。やっとご理解いただけましたか。」 「おうおう。いただけましたともさ!」
そして二人は部屋を出ようとした。ミディは最後に言った。
「なぁチヒロ・・・今日はきっと星が綺麗だから夜南の窓から星を見るといい。」
チヒロは勝気に微笑みその場を去った。
「ミディさ〜ん!!ミディさ〜ん!!ミディさ〜きゃああああああ!!」
壺を持っていたピロリは思いっきりコケ、ミディは壺を思いっきりかぶった。
「あ”!!!大丈夫ですかミディさん!!!」
声のこもった壺の中でミディは言った。
「ピロリ・・・私は何を持って来いっていいましたっけ?」 「あ〜はい!塩です!!」
ピロリは自信満々に答えた・・・が次の瞬間鬼を召喚してしまった。
「バカか〜〜テメェ〜はよ〜!!ああ??」
ピロリは壁にへばりついた。
「塩って言ったんだよ〜。ただでさえホントに食堂まで行って、ああ〜ごくろうさんでした〜。でも何で甘いのかなぁ〜?このお塩?走ってる間に入れ替わっちゃったのかなぁ〜?
ピロリは話を変えようと思いついたように辺りを見回した。 「あああ、あ、れ?チチチチチチ、チヒロちゃんは?」 「帰った・・。」
ピロリはその言葉に驚いた。
「へぁ!?!何で帰っちゃったんですか?ミディさんが返したんですか?」 「うるせっ!!これはチヒロの考えだ・・・今夜出発と同時にチヒロを奪還してから行く!
「奪還!!!!!」 「・・・チヒロが変える間際、自分の家の場所を行って帰った。」 「わぁ〜!お姫様奪還みたい〜!」 「お前・・・言うことが恥ずかしい。」
そういうと二人は屈み、コソコソ話し出した。
「でもひとつ問題がある・・・あのナツって男・・・多分計画に気づいてる。」 「どうするんですか〜?!」 「そこでだ!ピロリ・・・お前この前音の一切出ないジェットとか発明してたよな?」 「あぁ〜風の音はしますけど、回りの音に馴染むジェットですか?買い物するときに便利なんですよ〜」 「ふむ・・・って言うことで、良かったなピロリ。買い物以外で役に立てるときが来たぞ!!」
ピロリはポカ〜ンとした。
「デイヴィスにも協力してもらう!!電話しろピロリ!!それで母船のコックピットに時間を延ばしてくれるように頼めと伝えろ!あいつのことだ・・・何とかうまく立ち回れるだろう。出発の時間までお前は作戦とジェットの整備だ!!」 「ちょ、ちょっとまってくださいよ〜」 「返事は!!??」 「イエッサー!!」
こうしてピロリはまんまとミディに使われた。チヒロ奪還まであと一時間三十分。
ミディは部品を拭くピロリの横でコーヒーを啜りながらテレビをつけた。
『今日の2時半頃、キスト財閥の社長の長男、サン・キスト氏が2年前に行方不明になった、長村財閥の社長令嬢、長村雪さんについて会見を行いました。雪さんはキスト氏の婚約者で、今年の春頃婚礼を執り行うはずでしたが、その前の日雪さんは出かけてくると言ってそのまま行方不明になってしまいました。』
「かわいそーだな〜。逃げられたんだな〜」
横でブツブツ言っているミディを見ながらピロリは考え込んだように言った。
「サン・・・・キスト?」 「どうした?」 「なんか聞いたことあるようなぁ〜」 「どっかのスーパーの名前じゃねぇの?気のせいだな!お前には縁がなさそうな話だよ」 「ですよね〜」
二人は話しながらテレビに顔を向けた。
『キスト氏は雪さんの顔を今日テレビで公開しました。そして見つけた方に一億の賞金を授与することを発表しました』
写真を見たとたんミディは目を見開いた。
「・・・・・・・・おい・・・・・あの写真お前にくりそつなんだが・・・・」 「気のせいですよ〜」 「だ・・・だよな・・・・・・・・」
ミディはまさかとは思いつつもあまり気にしなかった。そうであってもピロリが知らないと言うならそれでいいとミディは考えてた。/☆