「まったく・・・しばらく見ない間に随分とやんちゃな友達が出来たみたいだな・・・チヒロは」 「先生!!」 屋敷内にいるかと思われた主がいつのまにか何もかも悟った顔で後ろに立っていたことにナツは心底驚く。 「君も無理をするよ・・・全て分かっていてあそこまで無理に引き止めることもなかったろう・・・」 「反射神経ってやつですよ・・・先生こそなぜおわかりになったんですか?」
ナツは殴られた拍子に切れて出てきた血を拭いながら、自分の主を見上げた。
「腐っても親子だ。私とチヒロは・・・目を見てすぐ分かったよ。何かあの子の中で大きな変化が起きていることは・・・」
星の煌く夜空を見上げ、眩しそうに目をすがめる彼に苦笑するとナツは勢い良く立ち上がった。
「貴方にはかないませんね・・・。さて、そろそろ冷やさないと完全に腫れあがってしまいますので、私は部屋に戻らせていただきます」 「ははっ!すまないなおてんば娘のために・・・よく冷やしたまえ、せっかくの男前なのだからな」
ナツは軽く礼をするとその場から立ち去り屋敷の自分にあてがわれている部屋に戻った。 おもむろにナツは自分の鞄から1つのパソコンを取り出す。しばらく食い入るようにパソコンに向かっていたが目的の情報が得られたのか不敵に笑うと大きな椅子の背に大げさに寄りかかる。
「・・・チジ・ミディペット・・・ね・・・・。おもしろい・・・・」
そうして口元を押さえ、噛み殺すように笑っているとナツの部屋にドアを控えめにノックする音が響いた。
「誰?」 「あっ・・・あの・・・ヴィッテルです・・・冷やしたタオルお持ちしたのですが・・・」 「・・・・あぁ・・・・君か・・・ちょっと待って・・・」
上ずったようなヴィッテルの声に先ほどの誘いが有効だったか・・・とナツは苦笑し、もう一度パソコンの画面に映る女に笑いかけた。
「君のパンチはなかなか効いたよ・・・。おかげさまで気分最悪だ。・・・やつあたりで女を抱くのは趣味じゃないんだよ・・・・お姫様救出で調子に乗らないほうがいい・・・すぐに後悔させてやるよ・・・」
軽く叩きつけるようにパソコンの画面を閉じると、ナツはドアを開けて恥らうように立っていたヴィッテルを誘うように招き入れた。
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「がぁあああああ〜〜〜〜〜!!むかつくあの男ぉぉおお!!!!」 「無事に救出できたのに何が気に入らないっていうんですかミディさんは〜〜〜・・・」
無事に本船に戻り、いざ宇宙へ・・・という雰囲気も皆無でミディはリビングで暴れ狂っていた。
「何がむかつくって!?何もかもだ何もかも!!あの顔もむかつく!!あの余裕面もむかつく!!何より、このミディ様のこん身のパンチを瞬間で身を引いて軽い衝撃にしやがったあの野郎〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」 「何を言うかと思えば・・・格闘小説じゃないんだから馬鹿みたいなこだわり見せてないで少しはチヒロちゃん救出を喜んでやれよ・・・」 「うっせぇ色黒はさっさと自分の船に帰れ!!がぁああああああむかつくぅうううう!!!!!」
あまりの怒りの現れようにチヒロは思わず頭を下げた。
「ごめんなさい・・・私が逃げ出す勇気が足りないばかりにそんな不快な想いをさせてしまって・・・ビスタ・ナツはいつもそうなのです・・・。全然掴めなくて・・・人を不愉快にさせるのが何より楽しいって感じの・・・・」 「どSじゃないですか・・・危ないんですね・・・彼・・・」
チヒロのビスタ・ナツの評価に思わずピロリは顔面蒼白する。
「いつビスタ・ナツが私を迎えに来るか分かりません・・・また、ご迷惑かけてしまうやも・・・」 「そん時はそん時だ!!返り討ちにしてくれらぁあああああああああああ!!!!!」
熱血ならぬ勢いで壁に蹴りを入れまくっているミディを横目に様子が心配になり戻ってきたディヴィスがチヒロに言った。
「でもこれから行くのは宇宙だよ?行けるのは国の通してる交通船か俺らみたいなパイロットだけだが・・・?」 「ビスタ・ナツはパイロット免許を持っています。小型の機体なら個人で所有しているみたいですから・・・」 「彼・・・何者なんですか・・・?」 「一応は父の秘書です・・・。私が6の頃からずっと父の元で働いていましたが・・・彼個人のことなら分からない事が多すぎて・・・」
「だ〜〜〜か〜〜〜ら!!!!アイツが誰かなんてどうでもいいんだ!!今度また私の前に姿見せたら必殺ミディミラクルパンチで肋骨をばらばらにする!!ピロリはそこに大量の塩をまく!!チヒロはそのまま奴を宇宙に捨てる!!それでOK!!万事解決!!」
ミディはようやく怒りが収まってきたのか、破壊した机に片足をのせて拳を掲げ高らかに物騒な計画を宣言した。
「おっ!流石デブリ・クリニック・カンパニー社長!!言う事が違いますな!!そう、そう!何かあったら俺達がチヒロちゃんを守ればいいんだ!!で、俺は何したらいいの!?」 「お前は機体にオイルでも注いでろ」 「ミディ・・・お前、親友に対する態度がなってないぞ・・・・」
本気だか冗談だか涙交じりの声でいじけるディヴィスの態度に、チヒロは思わず笑いを漏らす。
「あっ、笑わないでくれよチヒロちゃん!!」 「ディヴィス、お前馬鹿にされてるぞぉ〜〜〜」 「ミディ!!」
「あっ・・・しまった!!チヒロちゃん!!パンツ持ってきてますか!?パンツ!!買い忘れてしまいました!!」
ミディの言葉に条件反射が起きたのか塩ツボを片手に抱えたピロリが焦った様子で叫び声を上げた。
「ピ〜〜〜ロ〜〜〜〜〜〜リ〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・!!!!」 「え?何?何ですか?何でミディさんスパナ持っているんですか?あれ!?ってちょっ、ミディさん!?わっキャァああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜あああああああああ!!!!」 「あっはははは!!ピロリちゃんおかしすぎ!!」 「ぷっ、くすくすくす!!」
ピロリの場違いなほどの間抜けた台詞に、チヒロはお腹を抱えてディヴィスと共に笑いあった。 ふとディヴィスと視線が合いチヒロは微笑む。
―――あぁ・・・この人達に会えてよかった・・・
力強く信頼できるミディの言葉、ふざけた中に優しさの見えるディヴィスの気遣い、間が抜けててでも癒されるピロリの態度・・・。 ちょっとおかしくて変わってるけど、とても優しい人たち・・・
―――お母様・・・私・・・この人達と月の華を・・・私の夢を見つけてみせます・・・
チヒロは両拳をぐっ・・と力強く握ると、両腕を大きく伸ばし立ち上がる。
「さぁ!宇宙に行きましょう!!皆さん!!」 「お前が仕切るなぁあ!!!!」 「「お〜〜〜〜〜!!」」 「っておまえらぁあ!!!!」
続く/☆