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★第十一話

 


―――どうしてお父様は私のことを理解してくださらないの!?


―――どこでそんな反抗的な態度を身につけた!!お前は黙ってこの永村家のために身を尽くせばいいのだ!女が余計な考えを持つものではない!!


―――雪さんは私が気に入りませんか・・・


―――そういうことではないのよサン・・・ねぇ・・・貴方には・・・・


「・・・・・・・・・・っ」


背中を衝撃が走ったように、ピロリは飛び起きた。                                                                     両手が汗ばみ冷や汗が恐ろしいほどに体を伝っているのが自身で分かると、1つ息を吸って腕でぐいと汗を拭う。


「・・・・・・・・・・・あれは・・・私・・・・?」


ぼそりとつぶやいた声が静まる部屋に不気味に響いてピロリは頭を横に振る。


長い髪に、テレビで見たような貴族の着る洋服。テレビの画面で微笑んでいた女性のことを、なぜ自分が知っているかのように夢で見たのか・・・・


訳はなんとなく分かるが、それを理解したくなくてピロリは必死に頭を振った。


「違う!!・・・違う!!私はピロリです!!ピロリなんです!!」


誰かに言い訳しているわけでもなく・・・ただ、自分がそうだと思う自分の名前だから・・・


「・・・・・・ピロリなんです・・・」


―――よ~~~し!!お前は今日からピロリだ!!このミディ様が名づけたんだからな!?誇りに思いなさい!!


二年前、記憶を失って呆然としていた自分に力強く彼女はそう言った。その時やっと真っ白だった私の世界にピロリとしての道が出来たのだ。                                                                                                             力になりたくて必死に整備士の勉強をして、相棒にしてもらえて、彼に・・・出会わせてくれた・・・。                         昔の自分なんて覚えていなかったが、それでもピロリとしての二年間・・・確かな幸せがあったのに・・・


「思い出させないで下さい!!私を消さないで!!」


夢の中で話しかけた悲しげな瞳の青年・・・                                                           きっと彼は会ってはならない人なのだ・・・私が、ピロリとして生きる事を望むのなら・・・


「・・・・・出て・・・こないで・・・・サン・・・っ!!」


 


 


―――雪・・・・君は今どこにいるの・・・?


 


語りかけられている気がして涙が溢れそうになる・・・。                                                        余計なものを全て遮断するように、ピロリは毛布で頭まですっぽりと覆った。


 


 


―――――――――――――――――――――――


「ピロリちゃん!!もう起き上がって平気なの!?」


しばらくしてから、恐らく自分が倒れた事で心配をかけただろう三人に謝るために、ピロリは自室を出た。するとすぐに洗面器を抱えたディヴィスに会い、焦った声色で呼び止められる。


「ディヴィスさん・・・!ご心配かけましてスミマセン・・・。ちょっと風邪気味だっただけみたいです。この間雨の中に傘ささないで出かけたから・・・」                                                                                    「あぁ、チヒロちゃん連れてきた日ね。そういえばピロリちゃんって雨の日に傘ささないよね?風邪ひいちゃうのに・・・・何で?」                                                                                                                         


――――雪さん・・・・このままだと風邪をひいてしまう・・・傘を・・・


「っ・・・・こ、これからは気をつけるようにします!!」


顔を青くして俯くピロリに、ディヴィスは眉をひそめたが軽くため息をつくと空いている手をピロリの背に添えて、部屋に戻るように促した。


「とにかく、風邪気味なら部屋に戻ろうピロリちゃん・・・。今、ミディがジェット飛ばして医者連れてくるらしいから。」                                                                                       「ごめんなさい・・・あの、チヒロちゃんは・・・」                                                                            「滋養に良いもの作るってキッチンに。役立たずな俺にこれを渡してね・・・」                                                 


ディヴィスは苦笑交じりに洗面器を掲げる仕草をした。                                                                           おどけた仕草のディヴィスがおかしく、ピロリはくすりと笑う。


「役立たずなんてそんな・・・・くすくすっ・・・。・・・でも、本当にすみません・・・チヒロちゃんの歓迎会だったのに・・・・」                                                                                                 「ごめんと言う前にまずは風邪を治すことだよピロリちゃん。それが皆が君に望んでいることだし・・・」                                                                                                                「・・・それが一番のお礼になる・・・?」                                                                                       「・・・ミディの受け売りだね・・・さっ、分かったら早く部屋に戻る、戻る!眠れないなら子守唄でも唄ってあげるからさ!」                                                                                    「え~~~~・・・ディヴィスさん音痴じゃないですかぁ~~~~」                                           「言ってくれるねぇ・・・ピロリちゃん・・・」                                                                                   「くすくすっ・・・嘘ですよ!お願いしちゃいます・・・」                                                                            「お~~~~し任せとけ!!十八番の月面逃避行を聞かせてあげちゃうぞ!!」


「ありがとう・・・・ディヴィスさん・・・・」                                                                              「・・・うん・・・あんま心配かけさせないでやってくれ・・・・な?俺も心配だし!」                                                                              「・・・はい・・・!」                                                      


誰に、とはあえて聞かないけれど・・・今与えられる優しさが自分をピロリでいさせてくれる。ただ・・・今はその心地よさを味わってだけいたかった・・・


―――――――――――――


 


 


 


 


 


 


 


 

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【2007/05/23 20:57】 | stardust本編 | トラックバック(0) | コメント(0)
☆第十話

「チヒロ・・・・お前」                                                            「どうしたんですの?結果はどうですの?」                                       「これを見ろ・・・。」                                                      


チヒロは驚きの表情を隠せない3人に見守られながら恐る恐る結果を見た。


「・・・あの・・・全然分かりませんわ!」                                                 「チヒロ・・・この結果はお前と同じ歳の奴らの平均をはるかに超えた数値だ・・・。」                         「勉強はできると思ってましたが、まさかこんなにすごいなんて~!!」                         「最初の頃のミディみたいだな」


デイヴィスは懐かしそうに笑った。そのデイヴィスの言葉にミディは少しばかり照れた。


「あの・・・それじゃ私は宇宙でもう飛べるんですの?」                                          「は?バカ言え!!結果は良かったとわ言え、お前はまだまだ新米なの!!これから体を鍛えたり色々あんだから油断すんなよ!!!」                                             「・・・で、ですわよね~」                                                            「ですわよ!!」


そう言うとミディは軽くチヒロの鼻を小突いた。一瞬、眉間にしわを寄せたが結果の紙を見ながらチヒロは嬉しそうに笑った。


「よ~し!!これからミディさんの部屋でお祝いですね!!買出しいってきます~!」                    「勝手に人の部屋ですることを決めんな!!しかもこんな夜中に!?」                                                    「いいじゃねぇか!たまには!」                                                         「デイヴィス!お前は帰れ!」                                                         「俺、明日朝からの仕事じゃないも~ん!だからチヒロちゃん、俺と一緒に朝まで騒ごうねぇ~!!」                                                                             「え・・・・!!!///」                                                                「何赤くなってんだテメェは!!!」                                                    「なってませんわ!!」                                                        「へぇ~・・・そうなんだ・・・ヒヒヒ」 


ピロリは3人の話す姿を出かける寸前まで見つめていた。このままずっと4人でいられたらどんなに幸せか・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・雪・・・・


「え?」 


ピロリは立ち止まり辺りを見回した。最近よく聞く空耳。気になる声、名前・・・・それは懐かしく、どこか切なくなるような感じ・・・


「また・・・空耳・・・雪って誰だろう・・・。」                                                  「ピロリ?どうした?」


すっかり立ち止まっているピロリにミディは問いかけた。


「あぁ・・いえ!なんでもないですよ~!!じゃ、じゃあ買出しに行ってきます!!!」                「お、おう・・・」


ミディは走り出すピロリの背中を見えなくなるまで心配そうに見つめていた。


 


 


 


 


「もしもし・・・じい?ごめんね起こしちゃって・・・。どうしたのって?どうもしないよ・・・ただ今日は見つからなかったって言いたかったんだ。・・・・分かってるよ。僕はそんなことで諦めたりしない・・・うん・・・絶対に・・・。」


 


『坊ちゃん・・・コレだけは覚えといてください・・・。じいはいつでも坊ちゃんの見方ですぞ』                                   


「うん・・・ありがとう、じい」 


 


――――懐かしい夢を見た・・・。2年前の記憶なのに靄がかかったような記憶が、いきなり晴れたようだ。凄く鮮明だった・・・。


夢・・・あの時答えられなかったのは・・・見えなかったのかもしれない・・・。


サンはベットに横たわった。そして鞄から小さな飛行機の模型を出した。


 


――――サン・・・私が直してあげる!!――                                                               


 


「君が直せなかった模型はただひとつコレだけだよ・・・。」


でも・・・それから彼女は本気で整備士の夢を叶えようとしていた・・・。そんな君に置いて行かれるのが怖くて必死に止めた・・。


「思えば僕が君を動かしちゃったのかも・・・。」


模型をいじり、そう呟くと大切に枕元に置いた。


―――僕はもう、何もいらない・・・・ただ・・・・君が・・・・――――


 


 


 


 


東の空がぼんやり赤く染まりだした。辺りは一面うっすらと霧がかかり、視界は最悪だった。


「ん・・・・・・」                                                                    「・・・もう起きたのかい?」                                                              「あ、すいません・・・って・・キャ!!!!!」


ヴィッテルは急いで上半身をシーツで隠した。


「す、すいませんナツ様!私ったら・・。」                                                  「いや・・・別に構わないよ・・・。私はすぐにここを出るからね。」                                     「あ、あの・・また来てもいいですか?」


そういうヴィッテルにナツは微笑み部屋から出た。ヴィッテルはベットでナツとの余韻に浸った。


「ナツ様・・・・」


 


 


「もしもし・・・私だ。急にで悪いんだけどジェットを早急に用意してくれないか?・・・うん・・・分かった。感謝するよ。」


「ナツ、やっぱり行くのか?」                                                     「先生?!」                                                                    「私は構わんのだよ?」                                                             「でも・・・私が構わないもんですから」                                            「そうか・・・。」                                                              「はい・・・行って参ります」                                  


黒い車に乗りナツは空港に急いだ。


「ナツ・・・気を付けるのだぞ・・・」


 


 


 


 


 


 


 


「お、おい!!!まだピロリちゃんが帰ってきてないのに飲むなよ!!」                                      「うるへ~へっぽこぴ~が!!」                                                          「ミディさん・・・?」                                                                「って・・もう酔ってるよコイツ・・・はぁ~」                                                「おひ!!ちひほも飲め~!!!」                                                       「止めろ!!勧めるな!!」                                                           「うっせ~!!ほれ!!ちひほ~」                                                       「え、い、いや!!え!ちょっと!!・・・いやぁぁぁぁ!」                                               「あ!コラっ!」


 


「ただいまです~!おつまみ買って来ましたよ~!!」                                              「おう!!!待ってたよ~ン!ひろり~!うい~!」                                              「遅いですよ~ピロリしゃ~ん!早くの飲みまふ~!!」 


「え・・・っと・・・デイヴィスさん・・?」                                                     「すいません・・・止められませんでした・・・クスン・・・。」                                              「私達って・・・大変ですね・・・」                                                              「まったくです・・・。」


「おい!!おい、ひろり!!お前のそっくりさんがでてるじょ~!」                                     「あぁ~一昨日のニュースですよ!」                                                         


「ホントにピロリちゃんに似てるな~!!」                                                      「そうですか~?あ~あ~、こんなとこで寝たら風邪引きますよチヒロちゃん~!」 


 


「え・・・・・・この声・・・」


――――雪・・・―――


 


「どうした?ひろり?」                                                                           「も~しも~しピロリちゃん?」


心配する二人の横でピロリはスイッチが切れたように止まり前に倒れた。


「おい!!!ピロリちゃん??!!」                                           「お、おい!!ひろり???」                                                                「お前はいいから!俺医務室に連れてくわ!!!」                                              「で、でも!!!お前はチヒロちゃんを!!」


そう言うとデイヴィスはピロリを抱え、医務室へ走った。ピロリは心にポッカリ穴の開いた気分になりながらも必死で気持ちを埋めようとした。     /☆ 


 


                     


                                         


 


 

【2007/05/10 21:43】 | stardust本編 | トラックバック(1) | コメント(0)
★第九話

 


―――貴方は全てを捨てでもやりたいことは無いの・・・?私はあきらめないわ・・・この長い髪も綺麗な衣装も、屋敷での贅沢な生活もいらない・・・


―――ただ夢を捨てる事だけは嫌なのよ・・・・サン・・・・


――――――――


「・・・・・・・・・っ!!」                                                                                                                              リアルな再現ムービーの様なかつての夢にサンは飛び跳ねるように身を起こした。                                                          


「・・・・・・・・・・」                                                                                         夢の余韻が脳裏にくすぶりサンはベッドから降りて、窓を開け空を見上げた。                                                 輝く月の神々しさにサンは思わず手を伸ばした。


「どこにいるんだ・・・・雪・・・」


かの人の名前を口にした途端、自分の声があまりに震えているのに気づきサンは胸が締め付けられる気がした。                                                                                                何も分からない・・・何も理解できないうちに自分の婚約者は姿を消してしまった。                                                              親の決めた婚約。でもそれが両家の繁栄のためにはとても良い事だと分かっていたからサンはそれでいいと思った。                                                                              ―――決められた結婚の何が悪い?それで皆が幸せになるならいいじゃないか・・・


なのに彼女は消えた・・・多くの者を犠牲にして・・・自分を置いて・・・


サンは唇を噛み締めて壁に拳を叩きつける。婚約者の雪がいなくなってからすでに三ヶ月は経つのに未だに出ない答えに苛立ちが増すばかりだからだ・・・


「・・・・何で・・・・なんでだ・・・・・教えてくれ・・・っ!!」


―――ねぇ・・・貴方には・・・夢は無いの?


――――――――――――――――――


「・・・・・・・・・・・!?」


「お~~~~いピロリ!!チヒロ用の機体の整備終わったか・・・って・・・どうしたんだ?」                                   チヒロの訓練機の整備の様子を見に来たミディは、壁の一点を見つめて瞬き1つしないピロリを不審に思い目の前で手を振ってみた。


「あ・・・・ミディさん・・・・」                                                                      「まじでどうしたんだよピロリ・・・なんかおかしいぞ・・・?」                                           「いえ・・・・ちょっと誰かに呼ばれた気がしただけなんですけど・・・・」                                           ピロリはどこか遠いところを見るように視線をめぐらす。                                                       


「ピロリ・・・・・」                                                                        「あっ!!そんなことよりミディさん!!本当にこの機体でいいんですか・・・!?一応の整備はしてますけど・・・!!」                                                                                           しばらく瞳を虚ろにしていたピロリだが、意識を覚醒させると整備書を片手で叩いてミディに訴える。ピロリの様子が気になったものの今までいまいち彼女の過去に突っ込んでこなかっただけに今さら聞きづらくなっていた。                                                                   「・・・ん?あ、あぁ・・・いいんだそれで。さっきチヒロの動体視力テストとかいろいろやってみたんだけど中々見込みがあってな」                                                                                  「だからって・・・!!こんなじゃじゃ馬乗りこなせるのミディさんぐらいですよ!?」                             「だ~か~ら整備させたんだろ!?オートマ機能つけてれば何かあっても大丈夫だって!!」                  「・・・・ミディさん・・・・なんか面白がってませんか・・・・?」                                              「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・別に」                                                         「ミディさ~~~~~~~~~~ん!!!!機体で遊ぶのは整備士のこのピロリが許しませんよ!?」                                                                                  「なぁ~~~にいっちょ前ぶってんだ!!塩と砂糖間違える奴が!!」                               「それとこれとは話が別じゃないですかぁあ~~~~~!!!」


普段の会話、普段のじゃれあい・・・それでもふとした瞬間、ピロリの消えた過去がピロリを呼び戻しているようで、ミディは楽しい気分になれなかった。                                                    


(なぁピロリ・・・記憶が戻ったら、お前はやっぱりいるべきところに戻るのかな・・・?)                                                      


今ではこのデブリ・クリニック・カンパニーにいなくてはならない存在のピロリ。                                       いつかのピロリとの出会いを思い出し、ミディは俯いた。              


「それで、今からシュミレーションテストするんですか~?」                                                              「・・・・・・・・・」                                                                     「ミディさん?どうしたんですかぁ?」                                                         「・・・・・・・・いや、なんでもないさ!はやく準備しちまおう!!」                                      「あ・・・・・はい・・・?」


元気がなさそうに見えたミディの態度に首をかしげながらピロリは準備を始めた。                                    操縦シュミレーションでチヒロの能力を図るためだ。                                             しばらくすると、ピロリが買ってきたピンク色のジャージを身につけたチヒロがやってくる。


「・・・・・・・・・・・っぶぁっはははははははは!!!!何だそれ!!どうしたんだチヒロ!?」                       「ま、まぁ!笑う事はないでしょう!?ピロリさんが買ってきたものなんですのよ!?」                       「うわぁ~~~お似合いですよぉ~~~!!いいですよねぇ~ジャージ・・・機能的で可愛くて」                     「ピロリちゃんのセンスを疑うな・・・俺は・・・」                                                      「ディヴィスさん!?」                                                                


不恰好な姿に頬を膨らませていたチヒロだが、後ろからディヴィスの声が聞こえ目を丸くして振り返った。


「よっ!また様子見に来てたんだけど、調子はどうだい?」                                       「上々だ」                                                                       「ミディに聞いて無いだろ・・・。今からシュミレーション?」                                            「あっ、はい!!」                                                                                          「適正のテストだから気張らずにリラックスしていけよ?」                                        


そう言ってディヴィスはチヒロの頭をくしゃくしゃと掻き撫でる。チヒロはやはりまた頬を赤くして頭を抑えた。


「準備できましたよぉ~~~」


ピロリの声にチヒロは返事をするとシュミレーション用の設置された機体に乗り込んだ。


「じゃあ、3つ数えたら始めますからね?ミディさん、カウントお願いします!!」                            「分かった。準備はいいかチヒロ?」                                                                   「はい!!」


ミディの声にチヒロは力強くグリップを握った。


「3・・・・・・2・・・・・・・・・・・」                                                                      「・・・・・・・・・」                                                                        「1・・・・・・・・・・・・・・・・・GO!!」                                                                 「!!」


――――――――――――


“シュミレーション終了です。パイロットは適正結果を・・・・・”                                                                              


テスト終了のアナウンスが機械から流れる。                                                               機体の席には疲れたのか、ぐったりした様子でチヒロが座っていた。しかし、ミディもピロリもディヴィスさえもチヒロに声をかけるでもなく、唖然と立ち尽くしていた。


「・・・・・・・・・嘘だろ・・・・まさか、こんな・・・・」                                                                                         冷や汗をひとつ垂らしてディヴィスは声を震えさせた。                                            「・・・・・・・・・あっ・・・・チヒロちゃん!!」                                                                  ようやくピロリが震える足を叩きつけチヒロの元に駆け寄り、肩に手をかけ体を起こさせる。                                       疲労困憊の様子でピロリに支えられるチヒロを見ながらミディは不敵に笑った。                                                                 


手元にはチヒロのシュミレーションの結果表・・・


「・・・・・・・・これほどとは・・・・な・・・・・」


“パイロットは適正結果を受け取ってください・・・パイロットは・・・・”


静まり返った室内に、機械の音だけが不気味に繰り返し響いていた。                               


                                                                             

【2007/05/08 04:05】 | stardust本編 | トラックバック(0) | コメント(0)
☆第八話

「まずはどこに行くんですの?」                                                       「わっかんね~・・・それより・・・お前はここに来たからには私の部下だ。よってパイロットの練習を受けてもらう!!!!」                                                                    「は?パッパパ、パイロット???」                                                                    「ない行ってんですかミディさん~?」                                                      「ここに来たからには職業をもってもらう!!職をもたねぇ奴はここにいても邪魔なだけだ!」                          「そんな決まりありましたっけ~?」                                                 「あるんですぅ~!でもチヒロはお嬢だから家事とかできないしぃ~・・・ああぁ~もうパイロットしかな!!」                                                                     「お前何考えてんだよ!!」                                                                   


突然バカなことを言い出すミディに全員が反論した。知識がない上に素人のチヒロには危険すぎるからだ。


「何も考えてねぇ!!!」                                                            「偉そうに言うな!!!!第一、チヒロちゃんは女の子だぞ!!?」                                 「そうですよ~!例え訓練したからって、知識があるからって、必ずしも安全って事は宇宙に出たら皆無です~!!」                                                              「私も女の子なんですけど~!しかもいつも危険にさらされてるんですけど~」                       「お前と一緒にすんな!!!お前は女じゃない!!」                                             「そうです・・・イタ!!!!また殴った~」                                 「うっせ!!小姑どもが!!!決めんのはチヒロだ!!」


チヒロは突然すぎてビックリしていたが恐怖はなぜかなかった。多分心の中でこうなることは分かっていたのだろう。


「わわわわ、わかりました!!私パイロットになりますはわ!!ここにおいてもらって身なのに何もしないのは私もさすがに耐えられないですし・・。」                                   「いいの~??いやだったらやめていいんだよ~?」                                       「そうだよ!こんな鬼の言うこときかなくても俺がここにいること許すから!」                    「な~に訳の分からんこと言ってるのかなぁ~色黒腹黒!!」                            「腹黒はてめぇだ!!」                                              「も~二人とも~!チヒロちゃんの話聞きましょうよ~!」                            「へいへい~」


ピロリがチヒロの意見を再度聞こうと二人の口喧嘩をいったん止めた。しかしチヒロは考えを曲げなかった。


「ピロリさんやデイヴィスさんには心配をかけてしまうと思いますが・・・・私やると決めたんです!だから・・・だからミディさんお願いします!!」                                   「ふふふ・・・なかなか根性あんなお前!よしわかった・・明日から練習開始だ!もちろんお前は他の生徒より遅れてる。新しい奴が入るまで個人指導だ!!スパルタにしてやるから覚悟しろよ~!!ケーケケケ!!」                                                  「は、はい・・・。」(不安ですわ・・・)                                                 「お前笑い方キモいぞ!!」                                                      「笑ってたんですか~!?すごい特技ですね~!!」                                「いちいち拾わなくていいんだよ!!スルーしろ!スルーだ!」


チヒロは不安がないのはこの3人のおかげだと確信していた。この人達についていけば大丈夫・・・そう心で唱えるように・・・不安が自分の中に出ないように繰り返していた。






キスト邸ではその頃、ひとつの情報が駆け巡っていた。


「お坊ちゃま~!!!大変です~!!!」                                             「どうした、じい?走ると歳にはよくない」                                          「なんというやさしいお言葉ぁ~じいは感激ですぞ~!!!」                                   「はいはい・・・それで何が大変なんだ?」                                     「はっ!そうでした~!コレをご覧ください!!」                                       「・・・・長村・・・雪・・スーパーに現る・・・一億円ゲットだぜ・・?」                        「はい!なんでも格安スーパーに現れたらしくて~!!姿形は2年前の雪嬢のお姿からは考え付かないほどみすぼらしいとかで!!」                                                 「まぁ、あの人らしいじゃないか・・・。2年前と変わらずまたバカなことをしてるんだろ。」              「どうします?坊ちゃん!」                                                「迎えに行く。長村社長に電話を・・・。さぞかし泣いて喜ぶだろ。なんせ今の長村財閥は危機に陥ってるからね。僕らが結婚することによって家が救われるんだから。」             「坊ちゃんはそれでいいのですか?結婚相手が彼女で?」                            「まぁもともと親が決めた政略結婚だけど、長村財閥と仲良くなることで救われる面もある。だから父上はこの結婚に乗り気なんだろうね。僕も家のためになるなら賛成さ。」 


そういうとサンは車を出してくれと、じいに頼んだ。広いの中央に浮くブルーの愛車は2年前に雪と喧嘩してつけられた傷が生なましくボンネットに残っていた。


「坊ちゃん、この傷は直さなくてよいのですか?」                                 「ああ・・・本人に直させるよ・・・。じゃあ行ってくる。」


サンは勢いよく飛び乗り車を発進させた。彼らが宇宙に発ってしまったの事をしらないまま・・・。




ミディとデイヴィスはピロリたちより先に食堂でご飯を食べていた。


「そういえばさぁデイヴィス~この前のテレビでピロリのそっくりサン出てたんだぜぇ~!!」                                                                       「そんなに似てたのか???」                                                     「ああ、瓜二つだった。でもそのお方は何でも財閥のお嬢様らしい・・。ピロリなわけないよなぁ~。しかもそのお嬢さんに一億の懸賞金がかかってんだよ。驚きだよな~」                    「一億!!!!????なんでまてそんなに!!」                                     「わっかんねぇ~。でも・・・そういえばピロリの昔の話って聞いた事ないな・・。」                 「そうなのか?俺はてっきり知ってんのかと思った!」                            「知らねぇ~よ!なんか昔の事覚えてないっぽいんだよ・・。いや、どっちかっつうと一部の記憶がサラッと消えちまってるっていうか・・。」                                      


デイヴィスはピロリにそんな秘密があったことに驚いた。あのホワ~ンとした性格からは考えつかないシリアスな事がもしかしたらあるんじゃないかとデイヴィスは思った。


「お~いミディさ~ん!!」


ひと仕事終わらせたチヒロとピロリが勢いよく走ってきた。


                                                     「おう!こっちだこっち!・・・おいデイヴィス今のことは秘密にしておけよ・・・。」                 「お、おう!」                                                    


「お待たせしました!!何食べようかな~?チヒロちゃんはなにがいい?」                          「私はパスタにしますわ!」                                                 「あ!おいしそう~!」


デイヴィスは日常的な会話をする二人を包むように見ていた。もしかしたら今の時間は自分にとってすごく幸せな時間じゃないのか・・・こうやって皆一緒に過ごせるときは今しかないんじゃないか・・・心に中で幸せと不安が交差していた。/☆                                                              






                                        


                                                            

【2007/05/07 22:42】 | stardust本編 | トラックバック(0) | コメント(0)
★第七話

 


 「まったく・・・しばらく見ない間に随分とやんちゃな友達が出来たみたいだな・・・チヒロは」                          「先生!!」                                                                                    屋敷内にいるかと思われた主がいつのまにか何もかも悟った顔で後ろに立っていたことにナツは心底驚く。                                                                                             「君も無理をするよ・・・全て分かっていてあそこまで無理に引き止めることもなかったろう・・・」                                   「反射神経ってやつですよ・・・先生こそなぜおわかりになったんですか?」                                        


ナツは殴られた拍子に切れて出てきた血を拭いながら、自分の主を見上げた。                                  


「腐っても親子だ。私とチヒロは・・・目を見てすぐ分かったよ。何かあの子の中で大きな変化が起きていることは・・・」                                                   


星の煌く夜空を見上げ、眩しそうに目をすがめる彼に苦笑するとナツは勢い良く立ち上がった。


「貴方にはかないませんね・・・。さて、そろそろ冷やさないと完全に腫れあがってしまいますので、私は部屋に戻らせていただきます」                                                            「ははっ!すまないなおてんば娘のために・・・よく冷やしたまえ、せっかくの男前なのだからな」


ナツは軽く礼をするとその場から立ち去り屋敷の自分にあてがわれている部屋に戻った。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   おもむろにナツは自分の鞄から1つのパソコンを取り出す。しばらく食い入るようにパソコンに向かっていたが目的の情報が得られたのか不敵に笑うと大きな椅子の背に大げさに寄りかかる。


「・・・チジ・ミディペット・・・ね・・・・。おもしろい・・・・」


そうして口元を押さえ、噛み殺すように笑っているとナツの部屋にドアを控えめにノックする音が響いた。


「誰?」                                                                                           「あっ・・・あの・・・ヴィッテルです・・・冷やしたタオルお持ちしたのですが・・・」                                   「・・・・あぁ・・・・君か・・・ちょっと待って・・・」


上ずったようなヴィッテルの声に先ほどの誘いが有効だったか・・・とナツは苦笑し、もう一度パソコンの画面に映る女に笑いかけた。


「君のパンチはなかなか効いたよ・・・。おかげさまで気分最悪だ。・・・やつあたりで女を抱くのは趣味じゃないんだよ・・・・お姫様救出で調子に乗らないほうがいい・・・すぐに後悔させてやるよ・・・」


軽く叩きつけるようにパソコンの画面を閉じると、ナツはドアを開けて恥らうように立っていたヴィッテルを誘うように招き入れた。


――――――――――――


「がぁあああああ~~~~~!!むかつくあの男ぉぉおお!!!!」                                            「無事に救出できたのに何が気に入らないっていうんですかミディさんは~~~・・・」                                                  


無事に本船に戻り、いざ宇宙へ・・・という雰囲気も皆無でミディはリビングで暴れ狂っていた。                       


「何がむかつくって!?何もかもだ何もかも!!あの顔もむかつく!!あの余裕面もむかつく!!何より、このミディ様のこん身のパンチを瞬間で身を引いて軽い衝撃にしやがったあの野郎~~~~~~~~~~~~!!!!!!」                                                                        「何を言うかと思えば・・・格闘小説じゃないんだから馬鹿みたいなこだわり見せてないで少しはチヒロちゃん救出を喜んでやれよ・・・」                                                               「うっせぇ色黒はさっさと自分の船に帰れ!!がぁああああああむかつくぅうううう!!!!!」


あまりの怒りの現れようにチヒロは思わず頭を下げた。 


「ごめんなさい・・・私が逃げ出す勇気が足りないばかりにそんな不快な想いをさせてしまって・・・ビスタ・ナツはいつもそうなのです・・・。全然掴めなくて・・・人を不愉快にさせるのが何より楽しいって感じの・・・・」                                                                               「どSじゃないですか・・・危ないんですね・・・彼・・・」             


チヒロのビスタ・ナツの評価に思わずピロリは顔面蒼白する。


「いつビスタ・ナツが私を迎えに来るか分かりません・・・また、ご迷惑かけてしまうやも・・・」                         「そん時はそん時だ!!返り討ちにしてくれらぁあああああああああああ!!!!!」                                        


熱血ならぬ勢いで壁に蹴りを入れまくっているミディを横目に様子が心配になり戻ってきたディヴィスがチヒロに言った。


「でもこれから行くのは宇宙だよ?行けるのは国の通してる交通船か俺らみたいなパイロットだけだが・・・?」                                                                                                       「ビスタ・ナツはパイロット免許を持っています。小型の機体なら個人で所有しているみたいですから・・・」                                                                                                           「彼・・・何者なんですか・・・?」                                                                              「一応は父の秘書です・・・。私が6の頃からずっと父の元で働いていましたが・・・彼個人のことなら分からない事が多すぎて・・・」                                                                                       


「だ~~~か~~~ら!!!!アイツが誰かなんてどうでもいいんだ!!今度また私の前に姿見せたら必殺ミディミラクルパンチで肋骨をばらばらにする!!ピロリはそこに大量の塩をまく!!チヒロはそのまま奴を宇宙に捨てる!!それでOK!!万事解決!!」


ミディはようやく怒りが収まってきたのか、破壊した机に片足をのせて拳を掲げ高らかに物騒な計画を宣言した。


「おっ!流石デブリ・クリニック・カンパニー社長!!言う事が違いますな!!そう、そう!何かあったら俺達がチヒロちゃんを守ればいいんだ!!で、俺は何したらいいの!?」                                                                                         「お前は機体にオイルでも注いでろ」                                                                                「ミディ・・・お前、親友に対する態度がなってないぞ・・・・」


本気だか冗談だか涙交じりの声でいじけるディヴィスの態度に、チヒロは思わず笑いを漏らす。                                


「あっ、笑わないでくれよチヒロちゃん!!」                                                       「ディヴィス、お前馬鹿にされてるぞぉ~~~」                                                       「ミディ!!」                                                                                    


「あっ・・・しまった!!チヒロちゃん!!パンツ持ってきてますか!?パンツ!!買い忘れてしまいました!!」


ミディの言葉に条件反射が起きたのか塩ツボを片手に抱えたピロリが焦った様子で叫び声を上げた。


「ピ~~~ロ~~~~~~リ~~~~~~~~~・・・・!!!!」                                              「え?何?何ですか?何でミディさんスパナ持っているんですか?あれ!?ってちょっ、ミディさん!?わっキャァああ~~~~~~~~~あああああああああ!!!!」                                   「あっはははは!!ピロリちゃんおかしすぎ!!」                                                                         「ぷっ、くすくすくす!!」


ピロリの場違いなほどの間抜けた台詞に、チヒロはお腹を抱えてディヴィスと共に笑いあった。                                   ふとディヴィスと視線が合いチヒロは微笑む。


―――あぁ・・・この人達に会えてよかった・・・


力強く信頼できるミディの言葉、ふざけた中に優しさの見えるディヴィスの気遣い、間が抜けててでも癒されるピロリの態度・・・。                                                                                           ちょっとおかしくて変わってるけど、とても優しい人たち・・・


―――お母様・・・私・・・この人達と月の華を・・・私の夢を見つけてみせます・・・


チヒロは両拳をぐっ・・と力強く握ると、両腕を大きく伸ばし立ち上がる。


「さぁ!宇宙に行きましょう!!皆さん!!」                                                     「お前が仕切るなぁあ!!!!」                                                                   「「お~~~~~!!」」                                                                    「っておまえらぁあ!!!!」


続く/☆


 

【2007/05/06 00:28】 | stardust本編 | トラックバック(0) | コメント(0)
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